東新活動事例 リハビリ装置の開発

医療研究をカタチにした、リハビリ装置の開発

順天堂東京江東高齢者医療センター 黒澤尚教授
順天堂東京江東高齢者医療センター 黒澤尚教授

 

「病院に通わなくても、自宅で安全に治療する方法はたくさんある。優れた医療研究は、きちんと装置化すれば、すぐに効果が発揮される。研究成果を万人に実践できるよう取り組むことも医師の務めです。」

 

そう語るのは、順天堂東京江東高齢者医療センターの黒澤尚先生。変形性膝関節症研究の第一人者で、変形性膝関節症研究に関する多くの実績をお持ちです。

 

東新では、黒澤先生の医療研究を装置化するお手伝いをしています。

変形性膝関節症という現代病

 

変形性膝関節症とは、膝の間接軟骨が変性、摩耗によって炎症を起こし、痛みや動きの障害を伴う疾患。国内で2500万人、40歳以上の男女の6割が罹患しているとされ、高齢化社会の日本においてありふれた現代病と言われています。

 

通院での治療は、ヒアルロン酸の注入や、膝に溜まった水の抽出、痛み止めの処置が多いとされますが、それらは一時的な対処療法。

症状を改善するためには、適度な運動や食生活の見直しなど、生活習慣を見直すことが必要であるとの研究結果が明らかになっています。

にもかかわらず、依然として対処療法が続き、罹患者が増加しているのはなぜでしょうか。

 

問題となるのは、膝回りの筋肉の衰えと、炎症を引き起こす物質。

筋肉の減少によって軟骨が摩耗しやすくなり、炎症の原因となる物質は、過度な負荷をかけると増殖し続けます。

炎症の原因となる物質は、適度な負荷を与えると減少することがわかっていますが、患者さんが痛みをこらえて運動をしてしまえば、逆効果に。

痛みによって運動自体を継続できず悪化、という悪循環を引き起こします。

 

症状を改善するために重視すべきは、痛みの伴わない適切な運動を継続すること。

膝間接に対して無理なく適度な負荷をかけ、それを継続して行うことが、変形性膝関節症治療への糸口となります。

 

変形性膝関節症のリハビリ運動

 

黒澤先生が提唱するのは、膝関節のリハビリ運動による運動療法。

元々、膝の手術後に行っていた簡単なリハビリ運動です。

その運動を手術前の患者さんへ試してもらったところ、なんと、痛みが軽減され、症状が改善されるという臨床結果が。

このリハビリ運動は、自宅で出来る簡単なものですが、毎日継続して行うと、重度の患者さんでも日常生活に支障のないレベルにまで症状が改善されるそうです。

 

黒澤先生は、通院される患者さんだけでなく、著書やテレビ番組を通じてリハビリ運動での運動療法を広く発信。その甲斐あって、痛みで全く歩けなかった患者さんも、手術を行うことなく歩き回ることが出来るようになったとう事例が、数多く報告されています。

 

しかし、自宅で出来る簡単な運動とはいえ、継続できず、症状が悪化してしまう患者さんも数多くいます。

医療研究を日常に

ここで、冒頭の黒澤先生の言葉に戻ります。

医療研究を、病院だけのものにしてはいけない。リハビリ運動を人々の生活にとけ込ませ、誰にでも快適に実践できるようにしたい。研究を装置化し、家庭で手軽に使える製品を作れないだろうか?

黒澤先生は、このリハビリ運動と同等の効果をもつ運動を装置化し、普及させるため東新をパートナーにプロジェクトを進行中です。

変形性膝関節症リハビリ装置 原理試作機
変形性膝関節症リハビリ装置 原理試作機

プロジェクトの一部を紹介します。

上の写真は、リハビリ運動の原理試作機となる装置。

脚を載せると、脚が自動的に曲げ伸ばしされる仕組みです。

脚を曲げ伸ばしするという運動で、リハビリ運動と同等の効果があるという研究結果が出ており、装置での再現を試みています。

原理試作機を用いたヒアリング風景
原理試作機を用いたヒアリング風景

どのくらいのスピード、距離、時間で曲げ伸ばしを行うのか。

研究のノウハウを充分に引き出し装置化するには、言葉のやりとりだけでは不十分です。

東新では、黒澤先生に試作機を使ってもらいながら体感的にヒアリングを行うことで、医療研究をカタチにしていきます。

 

ヒアリングと試作を繰り返す、地道な作業。

このストイックな作業が、実はより良いモノづくりへの一番の近道なのです。